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発達障害と重ね着症候群

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問題の本質を見えなくする「重ね着症候群」

 

―発達障害は隠れている―

重ね着症候群に入る前に、二次障害
(一次障害から派生したもの)の概要を見ておきましょう。

発達障害において、一次障害はあくまで脳の機能障害です。

一般にASD(自閉症スペクトラム)と
ADHD(注意欠如多動性障害)の二次障害には、次のようなものがあります。

 

二次障害

  • 気分障害(うつ病)
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 不安障害(神経症)・・・強迫性障害、対人恐怖症、パニック障害(広場恐怖等)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 依存症・嗜癖行動・・・アルコール依存、過食症、ギャンブル依存
  • 行為障害(非行)、反社会的行動(犯罪)
  • パーソナリティ障害(人格障害)
  • 社会的ひきこもり
  • DV(家庭内暴力等)
  • 虐待、ネグレクト(育児放棄等)

上記の二次障害は、発達障害の合併症として出現してきます。

 

では、発達障害は、なぜ二次障害を併発しやすいのでしょうか。

次の3つの要因が考えられます。

  • 心理社会的要因
  • 生物学的要因
  • 遺伝的要因

 

心理社会的要因ですが、これらは、家庭環境、学校環境での合理的配慮や
信頼関係の欠如、ストレス、心理的トラウマ体験などが考えられます。

「ストレス・脆弱性モデル」というのがあるのですが、このモデルの根拠は、
もともと脳に脆弱性を持つ人は僅かのストレスでもネガティブ反応を起こし、
脳機能が正常であればストレスに強いというものです。

 

世の中には、ひどいいじめにあおうが、父親が暴力をふるうような
歪んだ家庭環境に育とうが、それを乗り越え、心に傷も残さず、
たくましく社会に適応できる人もいます。

こういう人は、脳が健常でストレスに強いのです。
しかし、発達障害の方は、このようなネガティブな環境に
おかれると、ストレスやプレッシャーで二次障害を併発してしまいます。

 

二つ目は生物学的要因です。

これは脳の機能障害を指します。

最近の研究では、うつ病や不安障害などと密接に関係する前頭葉、
尾状核、大脳辺縁系などの機能障害が報告されています。

発達障害者が些細な心理社会的要因でも二次障害を
起こしやすいのは、そのためだと考えられています。

 

三つ目は遺伝的要因です。

これについては、たとえば、うつ病やアルコール依存症などの
合併症を示す発達障害者は、親や親族にも、うつ病やアルコール依存症の人が
多いことが疫学調査によって明らかになっています。

発達障害者が二次障害を併発するかどうかは、遺伝的要因も大きな要素です。

 

それでは、発達障害が併発する二次障害について考察して行きましょう。

二次障害にともなう合併症は、もともとある発達障害に
別の疾患が重なることから「重ね着症候群」とも呼ばれています。

重ね着すると下に何を着ているのか判別できません。

 

抑うつや強迫症状など一番上に見えている別疾患の症状だけを
捉えて「うつ病」「不安障害」などと診断され、その治療のみを
受けているケースが少なくありません。

統合失調症などと誤診される場合もけっこうあります。

 

二次障害がやっかいなのは、重ね着の別疾患に目を奪われ、正確な診断ができず、
問題の根本にある発達障害が見えにくくなってしまうことです。

たとえば、
なかなか改善せず、長期化しているうつ病のなかには、もともとあった
発達障害が見過ごされ、うつ病の治療のみ受けてきたケースが少なくありません。

特に、女性の発達障害でその傾向が顕著です。

うつ病がなかなかよくならない場合は、
発達障害が裏に隠れている可能性があります。

心当たりの方は、一度、発達障害の専門医に相談してみることをお勧めいたします。

 

発達障害は、二次障害を併発してしまうと、
しばしば社会的な適応障害も起こしてしまいます。

二次障害のない人は、治療や指導に良好に反応し、
経過も順調ですが、合併症(二次障害)を持っている人は、
いずれも深刻な症状が発現し、家庭や職場、社会での
適応レベルが低く、治療や指導に対する治療効果もよくありません。

 

合併症の数が多いほど治療や指導は難しくなり、時間もかかります。

こうした事態を回避するには二次障害への対策が何より大事になります。

それでは、
「重ね着症候群」の定義を述べたいと思います。

これは、広島市精神保健健康福祉センターの
衣笠隆幸医師のグループが取りまとめたものです。

「重ね着症候群」とは?

―重ね着症候群の臨床像―

  • 初診時18歳以上(広義には16歳以上)
  • 知的障害は認められない(IQ85以上)
  • 初診時の主訴は多彩である。その臨床診断も多彩で、
    統合失調症、躁うつ病、うつ病、摂食障害、性倒錯、
    対人恐怖症、強迫、境界性パーソナリティ障害、
    スキソイドパーソナリティ障害、自己愛パーソナリティ障害など。
  • 背景に高機能型広汎性発達障害が潜伏している。
  • 高知能などのため課題達成能力が高く、
    就学時代は発達障害とは見なされていない。
  • 一部に、児童期、思春期に不登校や神経症などの
    既往があるが、発達障害を疑われたことはない。

以上のような特徴を持つ患者群は、多くは思春期中期頃から
対人交流の問題が生じているが、青年期後期及び若年成人になって
種々の臨床症状をもって初めて精神科外来を受診してきます。

 

成人患者の重ね着症候群の背景に潜伏している発達障害の症状は、
非常に軽度の者が多いですが高機能型発達障害の特徴を持っており、
児童期、思春期前期(中学生年齢)の軽度自閉症、アスペルガー、
特定不能の高機能型広汎性発達障害の研究によって
明らかにされた種々の臨床的特徴と多くを共通にしています。

 

また症状は軽度のために、日頃発達症患者にあまり接することのない
成人専門の精神科医にとっては、なかなか見いだすのは
困難な潜伏している障害であって、これまで各種臨床症状の陰に
存在していたために、見逃されていたものであると考えられます。

 

ADHDの発見

発達障害がベースに存在する女性の事例です。

これまで、さまざまな精神科クリニック、精神科病院で治療を受けながらも、
正しい診断がなされず、適切な対応がなされなかったケースです。

隠れたADHDによって社会的な不適応を招き、
二次障害として不安抑うつ状態を示し、自傷行為などの
問題行動を繰り返してきた女性患者の例です。

 

外来の診察室にいるとき、女性は、落ち着きなくモジモジと
手足を動かすことが多く見られました。受診日には、毎回、
母親同伴で来院し、身なりは整っていました。

 

外来で生育歴を含めた詳細な病歴聴取を行ったところ、幼少期から
現在に至るまで、一貫して不注意と多動性/衝動性の症状が認められました。

家や学校や職場など、さまざまな場面で
症状は広範に出現しており、ADHDと診断が下ったのです。

 

彼女は、ADHDの不注意の症状によって人の話を
きちんと聞けなかったり、約束を守れなかったりすることが
しばしばみられ、この結果、対人関係が不安定となっていました。

そして、その結果、さらにうつ状態など二次的な障害が出現したのです。

 

外来においてADHDの治療薬である
アトモキセチン(商品名:ストラテラ)による薬物治療が始まりました。

その結果、彼女の注意の散漫さは軽減したのです。

しかし、以前からみられた漠然とした不安症状や
自殺念慮は持続していたため、非定型抗精神病薬である
クエチピン(商品名:セロクエル)を100mg追加したところ、
不安感と抑うつ感は改善がみられています。

最終的にはアトモキセチンを120mgまで増量したところ、
自覚的には感情面での安定さが得られ、母親からもかなりの
集中力がみられると評価されるようになりました。

長期化した重ね着症候群の事例と思われます。

日本では、二次障害の後ろに隠れている
発達障害を見抜けない精神科医は多いと思います。

うつ病等が長期化するようであれば、
発達障害専門の外来に行くことをお勧めいたします。

 

 

 

下記文献を参考にさせていただきました。

 

【文献】

・大人のADHD(岩波明著、ちくま書房)

・発達障害に気づかない大人たち(星野仁彦著、祥伝社)

・発達障害に気づかない大人たち<職場編>(星野仁彦著著、祥伝社)

・精神経誌(2007)109巻1号(衣笠隆幸他著、広島市精神保健福祉センター)

 

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まんがびとMBビジネス研究班
ADHD諸君、自分で自分の可能性を狭めるな

まんがびとさんにて出版しました。私がADHDだと発覚するまでの10年間の誤診で生きてきた私の初めての書籍。




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